「婚姻届は出していないけれど、これからも一緒に暮らしていきたい」
そう考えている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、うさぎのもなかと一緒に、ゆっくり考えてみましょう。
※このコラムでは、現在の法律で婚姻届を出すことができる二人が、婚姻届を出さずに夫婦として暮らしている場合を中心に説明します。
同性パートナーについては、利用できる制度や法律上の扱いが異なるため、別のコラムで丁寧に取り上げます。
そもそも「事実婚」って、なに?

事実婚って、同棲とはちがうの?

似ているようで、実は少し違うんだよ。同棲は、「一緒に住んでいる」という状態のこと。事実婚は、婚姻届は出していなくても、「自分たちは夫婦として暮らしている」と二人が考え、実際にも夫婦として生活している関係のことです。制度の説明では、この二人の気持ちを「夫婦として暮らす意思」と表すことがあります。

ふうん。でも、二人がどう思っているかって、まわりからは分かりにくくない?

そうなんだよね。気持ちは目に見えないから、同棲なのか事実婚なのか、外からは分かりにくいことがあります。だから、あとになって二人の関係を説明しなければならない場面もあるんです。
「夫婦として暮らす意思」って、どういうこと?

その「夫婦として暮らす意思」って、どんな気持ちなの?

「いつか夫婦になりたい」ではなく、「自分たちは、もう夫婦として暮らしている」と二人が考えていることです。でも、気持ちって目には見えないんですよね。

たしかに。心の中は、のぞけないもんね。

そうなんです。そのため、二人の関係を確認する場面では、住民票や日々の暮らし方なども一緒に見られることがあります。
・住民票の続柄が「夫(未届)」「妻(未届)」になっている
・同じ住所で生活し、家計を支え合っている
・健康保険の被扶養者になっている
・賃貸借契約や生命保険などで、パートナーとして記載されている
・家族や職場、周囲の人から夫婦として認識されている
・事実婚についての契約書を作っている
※どれか一つだけで決まるわけではありません。二人の気持ちと、実際の暮らし方を合わせて考えます。

住民票の続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」と記載してもらえる場合があります。事実婚の関係を示す、大切な資料の一つになりますよ。

役所で手続きできるんだ。

うん。ただし、二人の状況や自治体によって確認されることもあるので、まずは住んでいる市区町村に聞いてみると安心です。
~補足ポイント~
住民票の記載は、事実婚の関係を示す大切な資料の一つですが、それだけで事実婚と決まるわけではありません。
年金などの手続きでは、住民票以外の資料や第三者による証明が必要になる場合もあります。必要な確認や書類は手続きによって異なるため、事前に窓口へ確認しておくと安心です。
じゃあ、同棲は恋人で、事実婚は夫婦?

同棲は恋人で、事実婚は夫婦、ってこと?

近いです。ただ、気持ちだけで決まるわけではないんです。

え、そうなの?

たとえば、「いつか結婚したいね」と思いながら一緒に住んでいるなら、同棲です。一方で、「婚姻届は出していないけれど、もう夫婦として暮らしている」と二人が考えているなら、事実婚に近くなります。

同じように暮らしていても、二人の気持ちが違うんだね。

そうなんです。それに加えて、実際に家計を支え合うなど、夫婦として暮らしていることも大切です。気持ちと、暮らしの形。その両方を見て考えます。
📌 三つの違い
- 同棲 …… 一緒に住んでいる(恋人のまま/いつか結婚したい)
- 事実婚 …… ①今すでに夫婦のつもり + ②実際に夫婦として暮らしている
- 法律婚 …… ①②に加えて、婚姻届を出している
事実婚は、イメージとしては「婚姻届を出していない夫婦」です。
ただし、法律婚とまったく同じ扱いになるわけではありません。

じゃあ、婚姻届を出していないだけで、あとは夫婦とおなじなの?

それが、そうとも言い切れないんです。同じように扱われることもあれば、扱いが違うところもあって。……そのあたりは、このあとお話ししますね。
何もしないと、どんなことで困る?

なにか、こまることがあるの?

たとえば病院。急に入院することになったとき、「ご家族の方ですか?」と聞かれる場面があります。婚姻届を出した夫婦として戸籍に載っているわけではないため、病院側が二人の関係をすぐに確認できないことがあります。病状の説明や面会などについて、確認や調整が必要になることがあるんです。

それは、こころぼそいね……

ほかにも、住まいの契約や、どちらかが亡くなったあとのこと。事実婚のパートナーは、法律で決められた「法定相続人」にはなりません。ここは、少し注意してほしいところなんです。

法定相続人って?

亡くなった方の財産を受け継ぐ人として、法律で決められている人のことだよ。
📌 ここがポイント
事実婚のパートナーは、法定相続人にはなりません。
遺言書などの備えがない場合、亡くなった方名義の財産は、原則として法律で決められた相続人へ引き継がれます。
病院では、実際どう扱われているの?

病院で困るって言ってたけど、ほんとに入れないの?

法律で、「家族でなければ面会や説明を受けられない」と一律に決まっているわけではないんです。ただ、病状は大切な個人情報なので、病院は「本人以外の誰に説明してよいのか」を確認する必要があります。そのため、病院のルールや、そのときの状況によって対応が変わることがあるんです。

病院によって違うんだね。

そうなんです。ご本人が話せるうちに、「この人に説明してほしい」「緊急時には、この人に連絡してほしい」と伝えておくと、二人の希望が病院にも分かりやすくなります。ただし、希望を伝えてあっても、必ずそのとおりになるとは限らないので、事前に確認しておけると安心です。
📌 病院に事前に確認しておきたいこと
- 入院時に、緊急連絡先や本人との関係をどのように伝えるか
- 病状説明や面会について、どのような確認が必要になるか
- 本人の意思を確認できないとき、病院ではどのように話し合いを進めるか
事実婚契約書は、病院に特定の対応を義務づけるものではありません。
それでも、誰に連絡してほしいか、誰と情報を共有してほしいか、二人がどのような希望を持っているかを整理し、伝えるための資料にはなります。

どうしたらいいの?

そこで、二人の考えを見える形にする方法の一つとして、事実婚契約書が出てきます。

契約書があれば、全部安心なの?

実は、できることと、契約書だけではできないことがあるんです。その話は、後編でゆっくりお話ししましょうね。
🌿 前編のおさらい
- 事実婚は「自分たちは夫婦だという二人の気持ち」+「実際に夫婦として暮らしていること」
- 気持ちは目に見えないため、二人の関係を見える形にしておくことが大切
- 住民票の「夫(未届)」「妻(未届)」は、二人の関係を示す大切な資料の一つ
- 事実婚のパートナーは、法定相続人にはならない
- 病院での対応は、病院のルールやそのときの状況によって異なる


コメント