相続・遺言

亡くなった方の財産、何がどこにあるの? ― 相続財産の調べ方のきほん

はじめに——「財産がどこにあるかわからない」とき

大切な家族を亡くされた後、気持ちの整理もつかないうちに「相続の手続きをしなければ」と焦ってしまうのはとても大変なことです。

さらには、そんな中で

「通帳は1冊見つかったけれど、ほかに口座があるかもしれない」

「もしかしたら借金があったかもしれない」

と不安を抱えたまま、どこから手をつければいいかわからなくなってしまう方も少なくありません。

このページは、そんな方に向けて書いています。

難しい言葉はできるだけ使わずに、「財産の調べ方のきほん」をやさしくお伝えしますので、どうぞゆっくり読んでみてください。

まず「手がかり」を集めるところから始めましょう

財産を調べるとき、最初にすることは難しい手続きではありません。

身近なところにある「手がかり」を集めることから始めます。

亡くなった方のお部屋や引き出しの中に、こんなものがないか確認してみてください。

  • 預金通帳・キャッシュカード
  • 銀行・証券会社・保険会社からの郵便物
  • 固定資産税の納税通知書
  • 保険証券
  • 確定申告書の控え
  • 権利証(登記済権利証・登記識別情報)

一見ただの書類に見えても、

「どこの銀行と取引していたか」

「どんな不動産を持っていたか」

を知る大切な手がかりになります。

郵便物は特に重要ですので、捨てずにとっておいてください。

相続財産には「プラス」と「マイナス」があります

相続財産というと、預貯金や不動産など「もらえるもの」をイメージする方が多いかもしれません。

でも、法律上は借金などの「マイナスの財産」も一緒に引き継ぐことになっています(民法896条)。

プラスの財産の例:預貯金・不動産・株式や投資信託・車・貴金属・生命保険の積立金など

マイナスの財産の例:住宅ローン・カードローン・消費者金融からの借り入れ・連帯保証債務など

マイナスの財産が大きいと、相続放棄も検討するかもしれません。

「プラスだけじゃなく、マイナスも含めて全部を把握する」ことがとても大切になります。

また、財産の全体像がわからないままだと、遺産をどう分けるかの話し合い(遺産分割協議)も、相続を放棄するかどうかの判断も、どちらも進めることができません。

相続放棄には「相続が始まったことを知った日から3か月以内」という期限があります(民法915条)。

まず財産の全体像をつかむことを、なるべく早めに始めることをおすすめします。

不動産の調べ方

不動産(土地や建物)については、固定資産税の納税通知書が一番わかりやすい手がかりです。

役所(東京23区の場合は都税事務所)に「名寄帳(なよせちょう)」を請求すると、

その市区町村内にある不動産をまとめて一覧で確認することができます。

ただし、名寄帳はその市区町村の管轄内の不動産しか確認できません。

別の市区町村に不動産がある可能性がある場合は、そちらの役所にも別途確認が必要になります。

不動産の価値を知りたいときは、「固定資産評価額証明書」を取得することで、公的な評価額の目安を確認できます。

預貯金の調べ方

通帳やキャッシュカードが見つかったら、まずその銀行に「残高証明書」を請求します。残高証明書は、「亡くなった日時点」と「請求した日時点」の2通を取得しておくと、亡くなった後にお金が動いていないかどうかも確認でき、より安心です。

最近はネット銀行を利用している方も多く、通帳がない場合もあります。

「どこの銀行に口座があるかわからない」という場合には、2025年から運用が始まった「相続口座照会制度」という仕組みも利用できます。

これはマイナンバーカードと紐づいた口座をまとめて照会できる便利な制度ですが、

マイナンバーカードと連携していない口座は対象外であること、照会の結果が出るまで1か月程度かかること、この2点に注意が必要です。

生命保険・退職金は「相続財産」とは少し違います

生命保険金は、あらかじめ受取人として指定された方が直接受け取るものです。

そのため、厳密には「相続財産」には含まれません。

ただし、相続税の計算には影響することがありますので、保険証券が見つかったら内容を確認しておくことをおすすめします。

死亡退職金や遺族年金なども、基本的には受け取る方固有のお金として扱われます。

借金・負債の調べ方

借金があるかどうかは、郵便物の督促状や、銀行口座の引き落とし履歴から気づくことが多いです。

ただ、連帯保証人になっていた場合など、家族でも気づきにくいケースもあります。

そんなときは、「信用情報機関への開示請求」という方法があります。

CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターという機関に請求することで、ローンやクレジットの利用状況を確認することができます。

開示請求ができるのは、法定相続人や2親等以内の親族、または委任を受けた代理人です。

手数料は2,177円(2026年4月時点)で、コンビニで郵送開示利用券を購入して支払う方法になります。

この時期はバタバタしますので、お急ぎの場合は、速達の利用も検討してみてくださいね。(速達使用時は2,511円)

結果が届くまでには10日前後かかります。

※手数料等は変更になることがありますので、最新情報は各機関のウェブサイトでご確認ください。

デジタル遺産にも注意を

最近増えているのが、ネット銀行・電子マネー・ポイントなど「デジタル上の財産」です。

亡くなった方のスマートフォンやパソコンに、資産管理アプリや家計簿アプリが入っていないか確認してみるのもひとつの方法です。

ただ、IDやパスワードがわからないと、ご家族でも中身を確認できないことがあります。

パスワードの解析は、専門業者にお願いすると高額な費用と多大な時間がかかることもあります。

生前に「エンディングノート」などにIDやパスワードをまとめておくことが、残された家族への大きな安心につながります。

詳しくは後ほどご紹介します。

相続するか、放棄するかは3か月以内に

財産を調べた結果、借金の方が多いとわかった場合は「相続放棄」という選択肢があります。

相続放棄をすると、プラスの財産も受け取れなくなりますが、借金も一切引き継がなくて済みます。

家庭裁判所への申し出が必要で、期限は「相続が始まったことを知った日から3か月以内」です。

何も手続きをしないまま3か月が過ぎると、プラスもマイナスもすべて引き継ぐ「単純承認」をしたとみなされますので、注意が必要です。

「相続全体の流れや遺産分割協議については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
→ 遺言書がないときの相続、何から始めればいい?」

遺言書・エンディングノートのすすめ——生前にできる準備

ここまで読んでいただいてわかるように、残されたご家族にとって

「財産がどこにあるか」

「IDやパスワードは何か」

がわからないことは、想像以上の時間と手間がかかってしまいます。

悲しみの中で、葬儀や役所の手続きなどと並行してこれらをすべて行うのは、体力的にも精神的にもとても大変なことです。

そんな苦労を少しでも減らすために、生前にできる準備があります。

・遺言書に「財産目録」を添付しておくこと。

どこの銀行に口座があるか、どんな不動産を持っているかを書き残しておくだけで、残されたご家族の調査の負担がぐっと軽くなります。

・エンディングノートに、デジタル関連の情報をまとめておくこと。

ネット銀行のID・パスワード、よく使うサービスのアカウント情報、スマートフォンの暗証番号なども、信頼できる場所に書き残しておくと安心です。

サブスクの情報も意外と忘れがちで、気づかず請求が続いてしまうものですので、こちらも忘れずに記入したいところです。

これらの準備は、ご家族のためだけではありません。

「この財産は〇〇に遺したい」

「スマホの中はここまでは見てほしくない」

という、ご自身の意思を伝える手段にもなります。

自分のこと、家族のこと、両方を大切にするための準備として、ぜひ一度考えてみてください。

行政書士にできること

「財産の調べ方がわからない」「どこに何を請求すればいいか整理できない」という段階からでも、行政書士がお手伝いできることはたくさんあります。

  • 相続財産の整理・ヒアリング
  • 各機関への照会のサポート
  • 財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成

不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の専門領域になりますが、必要に応じて信頼できる専門家をご紹介することもできます。

「何から手をつければいいかわからない」という状態からでも、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に整理していきましょう。

おわりに

財産の調査は、「どこから手をつければいいかわからない」と感じるのが当然です。

でも、ひとつひとつのステップは決して難しいものではありません。

まずは通帳や郵便物など「手がかり」を集めるところから、少しずつ始めてみてください。

大切なのは、あわてず、焦らず、順番に確認していくことです。

途中で「これはどうすればいいんだろう?」と思ったときには、遠慮なくご相談ください。一緒に考えていきましょう。

(東久留米市・行政書士 多田行政書士かみつれ事務所) 相続・遺言のご相談はこちらから →

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