はじめに——突然のことで、戸惑っていませんか
大切な家族を亡くされたばかりで、悲しみの中にいる方も多いかと思います。
そんな中で銀行から「相続の手続きをしてください」と連絡があったり、遺言書が見当たらなかったりすると、「何をどうすればいいのか…」と途方に暮れてしまいますよね。
このページは、そんな方に向けて書いています。
難しい法律の話も、できるだけ日常の言葉に置き換えてお伝えしますので、どうぞゆっくり読んでみてください。
まず、相続手続きにおすすめの1冊
相続の手続きを自分で進めたいとき、手元に1冊あると安心できる本があります。
たとえば……
- 「身内が亡くなった後の手続きのすべて」(自由国民社)
図解やチェックリストが多く、法律の知識がなくても読み進めやすい内容です。
まず全体像をつかむために、パラパラとめくってみるだけでも気持ちが落ち着くかもしれません。
「本当に遺言書はないの?」を確かめてみよう
手続きを進める前に、まず「遺言書が本当に存在しないか」を確認しておくことが大切です。
遺言書があるかないかで、その後の手続きが大きく変わってくるからです。
〈確認できる主な場所〉
- 自宅の中——引き出し、金庫、大切なものをしまっている棚など
- 公証役場——「公正証書遺言検索システム」を使えば、全国の公証役場に遺言書が登録されているかどうかを調べられます(相続人であれば無料で検索できます)
- 法務局——2020年からスタートした「自筆証書遺言の保管制度」を利用していた場合、法務局に預けられています
「ないと思っていたけれど、後から出てきた」というケースも実はよくあります。焦らず、確認できる場所をひとつひとつ探してみてください。
遺言書が後から見つかったら?
遺産の分割が進んでいる最中に遺言書が見つかった場合、原則として遺言書の内容が優先されます。
ただし、すでに全員が合意して遺産分割を終えていた場合は、改めて話し合いが必要になることもあります。
また、封がされた遺言書(自筆で書かれたもの)は、家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きを経てから開封するのがルールです。勝手に開けてしまうとトラブルの元になることがあるので注意してください。
遺言書がない場合は「法定相続」になります
遺言書がなかった場合、誰がどのくらい相続するかは法律で決まった目安(法定相続分)に従うことになります(民法900条)。
法定相続分ってなに?
「法定相続分」とは、相続する割合の目安を法律が定めたものです。たとえば……
配偶者(夫または妻)と子どもがいる場合 → 配偶者が 1/2、子ども全員で 1/2 を分け合います
配偶者と、亡くなった方の親(直系尊属)がいる場合 → 配偶者が 2/3、親が 1/3
配偶者と兄弟姉妹がいる場合 → 配偶者が 3/4、兄弟姉妹が 1/4
ただし、これはあくまでも「目安」です。
相続人全員が合意できれば、この割合と違う分け方をしても問題ありません。
「相続人」はだれになるの?少し細かい話
相続人になるかどうか、少し気になるケースをいくつかご紹介します。
- 実子・養子の区別はありません——どちらも同じ相続人です
- 認知を受けていない子どもは相続人になることができません——認知されているかどうかが重要なポイントです
- 内縁の妻・事実婚のパートナーは相続人ではありません(法律婚ではないため)
- 腹違いの兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)は、通常の兄弟の半分の割合になります
また、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という仕組みもあります。
たとえば本来相続するはずの子どもがすでに亡くなっていた場合、その子ども(つまり孫)が代わりに相続できます。
孫も亡くなっていればひ孫へ、と続いていきます。
兄弟姉妹の場合は甥・姪までが代襲相続できます。
実際の流れ——何をいつすればいいの?
ここからは、実際に手続きを進める順番をお伝えします。
① 相続人を確定する
まず「誰が相続人になるか」を、戸籍を集めて確認します。
亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になることもあり、思ったより時間がかかることがあります。
② 財産を調べる
銀行口座・不動産・車など、目に見える財産だけでなく、こんなものも相続の対象になることがあります。
- 名義預金——たとえば「孫の名前で作ったけれど実際は祖父母が管理していた口座」など
- デジタル遺産——ネット銀行・暗号資産・ポイントなど
- 死亡退職金——会社から支払われる退職金
- 生命保険金——原則として相続財産ではありませんが、受取人の設定によっては「みなし相続財産」として相続税の計算に含まれることがあります
借金(マイナスの財産)も調べておきましょう。
プラスよりマイナスが多い場合は、次の③が重要になります。
③ 相続するか、放棄するかを決める(3か月以内)
相続には3つの選択肢があります。
【単純承認】 プラスもマイナスも、すべて引き継ぐ方法です。何も手続きをしないまま3か月が過ぎると、自動的にこちらになります。
【相続放棄】 プラスの財産も受け取らない代わりに、借金も一切引き継がない方法です。家庭裁判所に申し出る必要があります。注意点として、相続放棄をした場合は代襲相続が起きません(次の人に引き継がれない)。
【限定承認】 「プラスの財産の範囲内でだけ借金を返す」という方法です。相続人全員で一緒に家庭裁判所に申し出る必要があり、手続きが複雑なため、利用されるケースはあまり多くありません。
※この3か月の期間(法律では熟慮期間といいます)は、「自分が相続人だとわかったときから」始まります(民法915条)。
④ 遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)
相続人全員が集まって「誰が何を受け取るか」を話し合う場です。
全員が合意できれば、法律の割合と異なる分け方でも問題ありません。
この話し合いの結果をまとめた書類が「遺産分割協議書」です。
これが後の名義変更などに必要になります。
ちょっと注意が必要なケース
未成年の子どもが相続人の場合
親と子どもが一緒に相続人になるケースでは、親が子どもの代わりに話し合いに参加することはできません(利益が対立するためです)。
家庭裁判所に特別代理人を選んでもらう必要があります。
ペットがいる場合
ペットは法律上「物(もの)」として扱われるため、だれが引き取るかを協議書に書いておく必要があります。ペットの今後の世話については、生前にしっかり準備しておくことがとても大切です。
相続直後にお金が必要な場合は?
遺産分割が終わる前でも、一定のルールのもとで預金の一部を引き出せる制度があります。
1つの金融機関から引き出せる上限は最大150万円で、
計算式は「相続開始時の預貯金額 × 1/3 × 自分の法定相続分」です。
葬儀費用や生活費など、急いでお金が必要なときに活用できます。
⑤ 名義変更・解約手続き
協議書がまとまったら、それをもとに各種手続きを進めます。
- 不動産——法務局で名義変更(相続登記)。2024年から義務化されました
- 銀行口座——各銀行での解約・名義変更
- 車・株式など——それぞれの機関での手続き
銀行や法務局によって必要な書類が異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
行政書士にできること
「相続の手続きは全部弁護士に頼まないといけない」と思っている方もいらっしゃいますが、行政書士でもお手伝いできることはたくさんあります。
- 戸籍収集のサポート
- 相続人・相続財産の整理
- 遺産分割協議書の作成
- 相続関係説明図の作成
- 各機関への提出書類のサポート
不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の専門領域になりますが、必要に応じて信頼できる専門家をご紹介することもできます。
「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に整理していきましょう。
おわりに
遺言書がなくても、手続きは必ず進められます。
まずは「誰が相続人になるのかな?」というところから確認し、財産の内容を少しずつ整理していきましょう。
法律には目安となる割合がありますが、家族で話し合って決めることもできます。
最初は「こんなに大変なの?」と感じるかもしれません。
けれど、ひとつひとつのステップは決して難しいものではありません。
大切なのは、あわてず、焦らず、順番に確認していくことです。
もし途中で「これはどうすればいいんだろう?」と思ったときには、遠慮なくご相談ください。一緒に考えていきましょう。


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